たぶん小学校の入る前だったと思うが、車の洗車を手伝わされたのを思い出した。
記憶にあるその車は、日産の小型トラックでジュニアと呼ばれていた。
運転手とその助手と思われる人が一生懸命磨いて、
その後屋根に一升瓶で酒をかけて紙テープ・チンチラ等で車を飾り、
荷台の鳥居に日の丸の旗を掲げ、家の者全員と近所の人たちが車を囲み、
万歳とか拍手をしてその車を送り出していくのでした。
物心がついた頃、あの奇怪な儀式のようなものは一体なんだったろうと母に聞いた。
それは車を車検に出すためのお祭りというのである。
一年の働きを報い感謝し、車検で新たに蘇ってくることへの愛おしさの表現だと…。
その車がしばらく見えなかったが、帰ってきたとき
また例の人達が酒を飲みかわしていた。
何か車は現代より人々の中心に溶け込み頼られ感謝され愛されてきた歴史の中で、
走る凶器とか環境汚染とか、車自身が勝手に作り上げた問題ではないのだが、
そこには車に対する人間の変化が漂う。
でも、もし体の一部とも例えられる車にどんな形の愛情を注ぐか
せめて車検だけでも 良い車検をして、体力の回復を望みたいものです。
TT